笑顔を持たない少女と涙を持たない少年



「余裕」


私は笑って、再び黒板を消し始める。


大好きな人の笑顔に、笑顔を返せること。


それが何より嬉しくて。


これまで笑うことが当たり前ではなかった私にとっては、それだけで何時間でも過ごしていける気がした。


「マジかよ、俺は授業の内容が全く分からなかった」


奏は笑って、一番前の席に座る。


黒板を消す私の背中に、その視線を感じた。