笑顔を持たない少女と涙を持たない少年



「依美、学校戻ろうぜ」


奏はそれだけ言って笑うと、私に声をかけた。


奏の声は優しい、変わっていない。


でも、私は動けなくて。


いや――


動かなかった、のかもしれない。


「早く出て行って、生意気なのよ、たかが高校生のくせに」


その声は、乱暴に開いたドアから、聞こえてきた。


私は声のした方を向く。


そこでは奏の母親が、煙草を吸いながら私たちを見ていた。