表情は見えないけど、何も言わない奏は、きっと。 困っている。 確かに、動揺している。 私は同じように、ドアの方を見ることしかできない。 穏やかだった私たちの空間に、私の心に、荒波が立つ予感がして―― 「母さん」 リビングルームに現れた、綺麗な女性。 奏が“母さん”と呼んだその女性は、数歩歩いたところで立ち止まり、奏を見てから―― 私を睨むようにして見つめてきた。 目が合って、唾を飲み込んだ。