笑顔を持たない少女と涙を持たない少年



彩菜の涙は、それからしばらくの間止まらなかった。


何度も俺の名前を呼んで、涙を流す彩菜が。


――愛しくて、でも愛せなくて、俺は、笑った。


身長の低い彩菜の目には、俺が抱きしめていれば俺の胸に隠れて何も見えなかったから。


俺はこの笑顔を見せないように、彩菜をただ抱きしめていた。




あの日見つけた“涙”の本を、俺はもう一度探したり、開いたりすることはなかった。