笑顔を持たない少女と涙を持たない少年



あの日と同じ場所で話しているはずなのに、今の俺にはその景色が少し変わって見える。


「そうそう、それであのときの奏の笑顔に私は救われた」


笑顔で話す彼女に、胸が痛む。


咄嗟に出た言葉と、あの笑顔。


今でも彼女を騙し続けているような感覚がして、申し訳ないことをしているような気がして、それでも俺は笑うことしかできなくて。


いつもと変わらない笑顔のまま、彩菜を見る。


図書室の本の匂いが、俺たちを包んで。


レトロなこの静かな空間に、言葉が響き合う。