笑顔を持たない少女と涙を持たない少年



「奏?」


彩菜の足が止まって、その姿がゆっくり振り返った。


俺の瞳に、彩菜の笑顔が映る。


甘い香りが、ふわりと漂って。


「なんでもねぇ」


愛しさと同時に――


何か、ほかの感情を感じた。


俺は笑顔で彩菜の髪から手を離すと、何事もなかったかのようにまた彩菜に引かれて歩き出した。