笑顔を持たない少女と涙を持たない少年



それはいつものトーンで、いつもの音で。


私を呼んだ、その声。


「着替えたら、行く」


ゆっくりと起き上がった私は制服に軽く付いたシワを指先で何度か伸ばし、そう言いながら立ち上がった。


はーい、と軽やかな返事を残して、母親はその場から離れていく。


スリッパを履いた足がフローリングの床をパタパタと歩く足音が消えると、私はそっと制服を脱いだ。


――母親は、いつでも優しかった。