私は奥のカウンターまで歩いて行く奏の背中を、気がつかれないようにそっと見つめた。 いつまでも、この時間があるわけではない。 高校3年生の、夏。 このまま時が過ぎて、秋、冬、春になれば、私たちはこの場所に戻れなくなる。 そうか。 ――この時間にはきっと、限りがあるんだ。 「奏」 私は、何を言うかも考えずに、ただ、名前を呼んだ。