音春もそれ以上は聞かず、

彼の手を強く握りながら走った。






・・・・・・

長く暗い道を音春と彼は

ただただ走った。

音春は彼の顔を見る。

彼は汗ひとつかいておらず、

疲れを感じさせない表情をしている。

まじまじとみつめていると

すると、

後ろを振り向いた

彼と目が合った。

音春は恥ずかしくなって、

目をそらした。

彼も同様

顔をほんの少しだけ

赤くしながら目をそらした。

そして、

ゆっくりと言った。

「・・・俺の名は

斉御司冬青(さいおんじそよご)。」


聞いたこともない名字と名前に驚きつつ

自己紹介をはじめる。


「わ、私の名前は佐伯音春です!

あの、助けていただき、

ありがとうございました!」

「・・・めんどくせぇ奴だな。」


「・・・え?」


「・・・いや、

なんでもない。」

そしてまた沈黙は続いた。


特徴的な名前を頭に浸透させ、

まだ続く道を斉御司と共に走った。