季節は初夏。


客足の無い閑散とした喫茶店に黒羽十夜はいた。傍らには氷の溶けたアイスティー。


パソコンで文章を書くーーそれは十夜にとって日常の一部で、生きていくための道具でしかない。


ため息を吐き、パソコンの電源を落とす。これ以上はもう書けないだろう、多分。


その時だった。奥から明るい金髪の青年がトレイにケーキを乗せて出てきたのは。


耳には蒼いピアスをしている。