「出会ったときから、

お前のことが好きだった」





周りには誰もいない。


なんの音も聞こえないはずなのに、


聞き慣れたキミの声は、


とても遠くで、届いた気がした。



〝ー18歳まで生きられないー〟


いつかの星野先生の言葉が、頭をよぎる。




〝私も好きだよ〟



素直に伝えられたら、どれだけ幸せだろう。


言いたいのに、…言えない。

言っちゃいけない。



この言葉は…この先、蒼を苦しめることになる




どうしたって、…傷つくのは、



残される蒼の方なんだから。



「私は蒼のこと、友達以上に思えない。


だから…ごめん」



頭の中で考えたセリフを、なぞるように読んだ


本当の気持ちは、心の奥底に隠して。


誰にも見つからないように、鍵をかける。




わかってるよ。


…これが、正しい答えだってこと。




だけど……。





また1つ、嘘をついてしまったという



罪悪感は、私の中で消えてはくれない。




「話って、それだけ?

だったら私、もう行くね?」


蒼の前から、一刻も早く…


逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。


「たちば…」


嘘に嘘を重ねて、


…どんどん最低になっていく私のこと、


これ以上、見て欲しくない。


「じゃあ、またね!」


精一杯の笑顔を向けて

私はその場から立ち去った。




曲がり角を曲がって、その場から逃げるように


走って家に向かう。



振り返っちゃいけない。



家に着くまでは、泣いちゃダメだ。