電車から降りて、蒼と2人、
灯の少ない街路樹を並んで歩く。
「じゃあ私、…こっちだから…」
分かれ道に差し掛かり、
今まで閉ざしていた口を、おもむろに開いた。
蒼とは、帰る方向が違うから、
もう一緒にはいられない。
本当はもう少しだけ…一緒にいたかった…
なんて、
そんな心残りを振り切るために、
蒼に背を向けた。
「立花」
歩き出そうと足を踏み出したとき、
不意に名前を呼ばれ
振り返る。
「…話がある。」
蒼は私の目を真っ直ぐに見つめた。
「…俺、…お前が好きだ。」
え…。
今、…何て言った?
蒼が…私を好き……?
「嘘……」
突然のことで、頭が働かない。
…言葉の意味がうまく理解できない。
「嘘じゃねぇよ。…出会ったときから
お前のことが好きだった。」
少しだけ頬が赤い。
蒼の真剣な顔をみて、…本気なんだと思った。
嬉しい…私も、蒼と同じ気持ちだよ。
私も…蒼のことが好き。
…嬉しい、…はずなのに、
…感情とは裏腹に、
目の前が真っ暗になった気がした。
