『来年も…再来年も…』
蒼の言葉が、頭の中でこだまする。
…来年…私は
蒼の隣に…いないかもしれない。
私には…未来を約束することは、できない。
ーわかってる。…誰よりもー
でも、…そんなこと、言えるわけないよ。
「うん、……約束。」
口角を上げて、精一杯の笑顔を作った。
ーまた1つ、…嘘をついてしまったー
蒼から目をそらし、私はまた、花火を見つめた
止まることなく、次々打ち上がる花火。
…もうすぐ、終わっちゃうね。
叶わないとわかっていても、
…願ってしまう。
この打ち上げ花火が。
今、この瞬間が。
……永遠に続けばいいのに…って。
最後に1発、大きな花火が夜空に咲いて、
夏祭りは幕を閉じた。
「…終わったな。」
「…終わったね」
私たちは、どちらからともなく立ち上がった。
「帰るか…。」
「…うん。」
それから、特に言葉を交わすことなく、
駅までの道を歩いた。
普段と違って空いている電車に乗り、
窓の外の景色を眺める。
「ねえ、…蒼。」
静まり返った電車の中で、
私は小さく、蒼の名前を呼んだ。
「…何?」
「今日、…一緒に来てくれて、ありがとう」
蒼の目をみて、笑顔でそう告げる。
「…あぁ。」
蒼も、私に笑顔を返してくれた。
このとき、…不覚にも、
蒼の笑顔にドキっとさせられてしまった。
だけど、それすら
自分の心の奥底へ隠して。
顔に熱が集まっていくのを感じながらも、
私は窓の外に視線を戻した。
