勢いよく、花火が打ち上げられた。
私はすぐに顔を上げ、空を見上げる。
目一杯に広がる、打ち上げ花火。
キラキラ光り出した空。
遠くで聞こえる、歓声。
私は瞬きすら忘れ、花火を見つめた。
次々打ち上がる、色とりどりの花火から…
目が離せない。
「…きれい…だね。」
「そうだな…」
夏の夜空で輝く花は、
言葉では言い表せないくらいきれいで。
毎年、夏休みは病院で検査入院をしていたから
お祭りになんて行ったことなかった。
いつも、…病室から見える、小さな花火を
1人で眺めているだけだった。
だけど今、
…遠くから見てただけの花火が
こんなにも近くにある。
…そして私の隣には………蒼がいる。
夢だった。
好きな人と、一緒に花火を見ること。
同じものを見て、〝キレイだね〟って
言い合うことが。
…気づけば、涙が頬を伝っていた。
その涙を拭うことなく、
私は目の前に広がる光景を、目に焼き付ける。
絶対に…忘れないように。
「蒼。」
「ん…?」
「今日、…ありがとね。」
花火を見つめながら、呟いた。
「………。」
私は、突然黙り混んでしまった蒼に、
視線を向けた。
何も言わずに、花火を見上げる蒼。
「…来年も」
無言かと思えば、蒼は不意に口を開いた。
「来年も…再来年も、
…一緒に花火を見よう」
視線を交え、…真っ直ぐな瞳でそう言った。
