キミと出逢えた季節〜最初で最後の恋〜



どうしていいか分からず、

私はただ遠ざかって行く蒼の背中を見つめた。





〝動くな〟って…言われても…



ここ、道のド真ん中なんだけど……。




それにしても…どこ行ったんだろ…?










言われた通り一歩も動かず、



蒼を待つこと3分。




「あ…」


人混みの中から、まっすぐ私の方へ歩いてくる


蒼の姿が見えた。




…あれ…手に何か持って…?





「立花。」





ぶっきらぼうに名前を呼ばれ、


手渡されたのは……りんご飴。




〝見て見て、りんご飴!食べたいなぁ…〟


買って来てくれたんだ。


私の話、ちゃんと聞いてくれてたんだね。





なんでかな…









すごく、…嬉しい気持ちになるのは。







「ありがとう、お金…」




「金はいいから。」


バッグから財布を取り出そうとした私を


蒼はすかさず引き止めた。




有無を言わせないような声色。




「……ありがと。」




笑顔でお礼をいう。





すると、蒼は柔らかく微笑んだ。





…その表情に、胸がドキっとする。





…なに、…その顔。




いつも、…じゃないけど。

大抵無表情なくせに、


いつの間に、


…そんな顔みせるようになったの。





顔が赤いことに気づかれないように、


少しうつむきがちに、りんご飴を口に運ぶ。



もらったりんご飴を食べながら、


私たちは、いろいろな屋台を回った。




クレープにたこ焼き、ヨーヨーつり、

たくさんのことをして




お祭りを楽しんだ。




〝どんだけ食うんだよ〟


って、蒼に笑われちゃったけど。




いいじゃない…今日くらい。




体調もだいぶいいし。



めまいや頭痛も、大丈夫。







それに、


万が一の時のための、


薬はちゃんと持って来てる。







だから…どうか。






無事に、…お祭りを終えられますように…。