夏祭り 〜ちひろside〜



8月15日。



今日は、特別な日。


小百合と、蒼と、岸本くんと、

約束してた、夏祭りへ行く日だ。



夏休みの間、私はこの日を心待ちにしていた。





友達とお祭りに行くの、


小さい頃からの夢だったんだよね♫





小百合との待ち合わせ場所は、


私の家から近い最寄り駅、




だったんだけど…。





ついさっき、


小百合から一件のメールが届いた。



〝ごめん、ちひろ!

今日、どうしても外せない用事ができて

行けなくなっちゃった。

私のことは気にしないで、楽しんで!〟


とのこと。



約束してたのに…。


小百合と一緒に行けないなんて…


かなりショック…。



少々足取りが重くなりつつも、


私は電車に乗って、

蒼と岸本くんとの待ち合わせ場所へ、向かった




…約束した時間の15分前。


待ち合わせ場所の改札口に、


私が着いたときには、


蒼はすでにそこにいた。




アレ…蒼、1人だけ…?


岸本くんは、…一緒じゃないのかな…?


と思いつつ、ふと周りを見渡すと、


駅前を通る多くの人が、蒼のことを見ている




…でもまあ、


あんなイケメンさんが、駅前に1人で立ってたら



注目浴びてもおかしくないよね…。



…当の本人は、スマホいじってて、

人目なんて全く気にしてないみたいだけど。




私は小走りで蒼のところへ駆け寄った。



「蒼、お待たせ!早いね?!」


「…あぁ…まあ。」



「…岸本くんは?」

辺りを見渡して見たけど、岸本くんの姿が

見当たらない。





「来れなくなったんだと。」



「え?そう…なの。

小百合も、用事で来れないって…。」




あれ…ちょっと待って。



てことは、つまり




「私たち、2人だけって…こと?」



「そーゆうことになるな。」


平然とした顔で、スマホを直した蒼とは



違って、私は驚きを隠せなかった。




「…用事なら、しかたないよね。」



2人が来れないのは…残念だけど。



「せっかくここまで来たんだし、

私たちで楽しもう?!」




笑顔でそう言った私に、







「…そうだな。じゃ、行くか。」




蒼も小さく微笑んだ…ような気がした。