電車の中で、特に会話をしないまま、
改札口を出る。
「じゃーまたな!2人とも。」
いつもと変わらず、笑顔で手を振る
涼介に、俺も軽く手をあげた。
「ああ。じゃーな」
「またね。」
帰る方向が違う涼介と別れ、
俺たちは並んで街路樹を歩く。
「蒼。」
ここにくるまで口数の少なかった小百合が、
おもむろに口を開いた。
「今日も、大活躍だったね。」
いつもどおり、明るい声色。
小百合は俺の方を見ず、
まっすぐ前を向いたまま、続けた。
「でも後半の方…、
シュート外したときくらいから
焦ってたでしょ?」
「…分かったのか?」
…誰も気づいてないと思ってた。
いや…。
涼介は、…気づいてたか。
「分かるよ。何年一緒にいると思ってんの。
私、今日の試合のあんた見てて、
中学最後の…あの試合のこと思い出した。」
俺の1歩前を歩く小百合が、
今どんな顔をしているのか、わからない。
「また、あのときと
同じようなことになるんじゃないかって、
正直ヒヤヒヤしてた。」
「…。」
俺も、同じだった。
「だから、今日…ちひろがいてくれて、
よかったって思う。」
不意にこちらを振り返った小百合。
「…本当に、優勝おめでとう!」
ニッと笑った小百合は、
夕日をバックにしていたせいか、
なんだかとても、…眩しく見えた。
