私は再び観客席に腰を下ろした。
コートを走る蒼を、見つめる。
残り…あと20秒
69-71
あと…3点。
お互いパスをカットされたら仕返し、
なかなか得点できない。
…残り…10秒。
ボールを持っていた岸本君が、蒼にパスをした
蒼は相手をかわしながら、前へ進む。
残り、…5秒。
ゴール下まで回り込む時間なんて、
もうない。
蒼は足を止め、
ボールを額の上あたりにセットした。
…打つ気だ。
でも、…遠い。
蒼がいる位置は、スリーポイントゾーンから
かなり離れている。
ゴールから…遠すぎる。
だけど、蒼はなんの躊躇もなく、
まっすぐにリングを見つめている。
完璧なフォームを崩さず、
高くジャンプして、蒼はボールを手放した。
ーピー。
それと同時に、試合終了の笛が、
鳴り響いた。
会場にいる全ての人の視線が、
空中にあるボールに向けられる。
高いアーチを描いて、飛んでいくボール。
そしてそれは、
パシュっ…と乾いたネットの音を響かせ
ゴールに吸い込まれた。
その瞬間。
一斉に歓声が湧き上がった。
得点は…72-71
「勝っ、た…?」
声が震えた。
視線の先には、
チームのみんなに囲まれて、
抱きしめられている蒼の姿。
勝ったんだ…。
〝仲間をみて〟
〝まだ負けてない〟
「……届いた…。」
…ずっと、今日を楽しみにしてた。
約束してた練習試合に、
行けなかったあの日から。
ずっと、…蒼がバスケしてる姿を
見てみたかった。
…チームメイトたちの中で、
笑顔をこぼす蒼。
〝俺たちは負けない〟
〝予選も決勝も、全部勝って全国へ行く〟
いつかの蒼の言葉が、頭の中で蘇った。
…あれ。
なんでだろう。
気がつくと、頬に涙が流れてた。
「ちひろ…?」
心配して声をかけてくれた小百合の目にも
涙が溢れている。
…そうだ。
小百合は…私よりもずっと前から、
蒼のこと、見てきたんだよね。
〝中学の時、いろいろあって…〟
だから、…嬉しいに決まってるよね。
「…小百合。」
「…ん?」
「私…、今日のこと、絶対忘れない。」
