拳を強く握りしめた、そのとき。
「蒼ーーー!!!!!!」
観客席から聞こえた
あいつ…立花の馬鹿でかい声に
反射的に振り返る。
「何この世の終わりみたいな顔してんの?!」
「は…?」
突然何言って…。
「周りを見て!
いつもみたいに仲間を見て!」
手すりから身を乗り出し、
「まだ負けてない!!
まだ、終わってない!!!」
必死になって叫ぶ彼女の声が、
やけに耳に響いた。
…〝まだ、負けてない〟
そうだ…。
〝仲間をみて〟
さっきの俺には…、
涼介の声、聞こえてなかった。
全部、一人でやろうとした。
焦りに集中を濁されて、
周りが見えなくなるところだった。
バカか、俺は。
そのことに
気づかせてくれたのは、…あいつ。
…観客席にいるあいつに、もう一度
目を向けると
審判から何か言われたのか、
慌てた表情で頭を下げているようだった。
なんだ、あいつ。
本当変な女。
お前みたいな女は、始めてだよ。
何考えてんのか、いまいち分かんねぇけど。
〝周りを見て〟
〝まだ、終わってない〟
……かっこよすぎるだろ。
「涼介。」
あいつに、負けてらんねぇ。
「え…」
「取られた分、ちゃんと取り返すから。」
柄にもなく焦ってんじゃねぇ、俺。
落ち着け。
周りを、見ろ。
ボールの位置、仲間の動き、
相手がどう動くか。
一瞬でも見逃すな。
