私たちは最前列に腰を下ろした。
試合が始まるまで…後10分てとこか。
「ねぇ、小百合」
「ん?…何?」
「蒼は…中学のときから バスケしてたの…?」
「あぁ…そうだよ。」
…ちひろのこの口振り
蒼は…ちひろに何も言ってないんだね。
「そうなんだ…!!
ねぇ、どんな感じだったの?!
バスケ、やっぱりすごく上手い?!」
キラキラした目で真っ直ぐに私を
見つめるちひろは、小さな子供みたいだ。
「うん。…すごく。」
…それはもう、
周囲の人たちから…天才と言われるほどに。
「中学に上がった頃くらいかな。
上達の仕方が、他とは段違いだった。」
身につけた実力と、勝利に対する圧倒的自信。
「蒼は…
すごくひたむきに、バスケをしてきた」
やる気も才能もある。
常に上を目指して。
毎日、毎日。
蒼は、…人一倍努力していた。
「でも…夢中になりすぎると、
ときどき周りが見えなくなることがあって。」
一人で考え込んで、
突っ走って。
「それで、中学の頃は色々あってさ。」
中学最期の試合、
あれは…
蒼の心に大きな傷をつけた。
「そう、…なんだ。」
「あ、いや…ごめん。
なんか微妙な雰囲気になっちゃったね。
…そーゆうわけだから…、
今日の試合、蒼のこと見ててあげてね」
私が話終えたのと同時に、
試合開始のホイッスルが鳴った。
