美羽とお喋りしながら、帰り道を歩く。

『夏妃。』
「ん?どうしたの。」

『最近さ、大丈夫?急にアキ君がいなくなって、ずっと夏妃のことが心配だったんだ。』
美羽の目がうったえる。
「うん。急すぎて全然まだ整理できてないかな。けど大丈夫だよ。」

『本当?夏妃は辛い時も笑って頑張るから…。ため込まないで私にはき出して大丈夫だよ。辛いときは甘えて。』
心臓の音が少しだけ早くなる。
優しい言葉を言われて泣きそうになる。

「うん、ありがとう。いつも頼りにしてるよ。」

美羽の顔をみる。
「アキと小さいころから一緒にいすぎて、大好き過ぎて、絶対忘れてたくないと思うのにさ…。」
『うん。』
美羽が優しく頷く。

「たった数週間会えないだけで、声とか、体温とか、アキのこと全部は覚えてられないのが苦しくなる。」
『夏妃。』

「忘れたくないのに、アキとの思いでが薄れていくのが怖いんだ…。」
頬が少し冷たくて、自分が泣いているのに気づいた。
ふわっと風が横切り、美羽に抱きしめられる。

『夏妃、つらかったね。頑張り過ぎだよ。』
「うん。ずっとつらくて、苦しかった。」

美羽の声は少し鼻声で、私と一緒に泣いてくれてるのが分かった。

『アキ君との思い出全部覚えられなくても、いいんだよ。覚えてなくても、アキ君と夏妃が一緒にいたことは無くなったりなんかしないから。』

「うん。そうだよね。」
『それにさ、夏妃が笑顔じゃないと、アキも心配しちゃうよ。』
そう言うと、美羽は、私の口を引っ張り上に上げてくれる。
つられて笑ってしまう。

「美羽、今日は、ありがとう。」
『全然!いつでも、何でも話してね』

日差しがゆっくり落ち始め、帰り道を歩く。
別れ道に立ち、じゃあ、またね。ってお互いに手を振った。


今日は、少しだけ素直になれた気がした。