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『………………。』




「あーっかね!電話終わった?なに渋い顔してんの!次の数学のテストでラストなんだからもっとハイテンションでいこーよっ!!」




とある学校の2年生の教室では、ちょうどテストの真っ最中だった。




皆が次のテストへ向けてノートや教科書を見たり、問題を出し合っている中、ある少女の一際明るい声がやけに大きく響く。





『…凛、もう少し声のボリューム落とそっか。みんな集中してるし……。』




「ふふん。あと一教科でこの地獄が終わると思うと嬉しくって!」



凛と呼ばれた黒髪ロングの少女は、本当に嬉しそうに目を輝かせてる。







『ま、そうだね。でも私は一足先にその地獄から離脱しようかなー。』




「ん?えっ!?嘘!朱音帰るの!?数学のテストは!?」






朱音。そう呼ばれた少女は、カバンに荷物を詰めるとスタスタと教室入り口のドアまで歩みを進めた。





クラスメイトも、その行動の意味がわからなかったのか、全員がドアの所で止まった朱音に目を向けた。




『ごめんね、凛。私早退するから、テスト頑張ってー』





「なんでなんで!!具合悪いの?」



『いや、別に?』




「じゃあなんで帰るのさ!朱音いなきゃつまんない!!」





『テストなんだから、私いてもいなくても変わらないって。』




「う、そうだけどー!」





うーうー、と唸っている凛に苦笑いを漏らしながら、朱音は教室のドアに手を掛け、振り向きながら手を振った。






『ごめんね、空気読めない人からデートのお誘いきちゃったからさ。もしかしたら明日も休むかもー。』




「は?デート!?朱音!いつの間に彼氏できたの!」





『あはは!じゃあねー』




「ちょっとぉぉぉぉぉぉ!!!!」





未だにギャーギャー言っている友達の声を背中に受け、一人の少女は教室を後にした。






『さーて、空気読めないうちのリーダーさんに、今度はなに奢ってもらおっかなぁー。』



廊下を歩きながら、一人呟く。





頭の中には今食べたいものが次々に浮かんでいた。







『クレープ、たこ焼き、アイス………あっいっそのことランチ+デザートでもいいかも!』





楽しそうに、ニコニコしながら校舎を後にする少女は、思いついたようにピタッと立ち止まった。






『そういえば、先生に帰るって言ってない。』




言わないとダメかなぁ。と言いながらも、職員室まで戻る気はないようだ。



数秒考え、ま、いっか!と再び歩き出す少女は、どこか楽しそうに、それでいて妖しげに微笑んだ。







『さて、今回はどんな任務かなー』




あの電話の男の待つ洋館へと、一歩、一歩、近づいていく。




まるで、何かのカウントダウンのように……。