君×私×彼


「花奈?」


教卓の前で未だに立ち尽くしていると

別の人物が私の名前を呼んだ



「あれ、俊…?」



そこには部活に行ったと思っていた俊がいた



「部活は?」


「今日は体育祭の片付けの手伝いだけ、って前も言ったじゃん」



そうだったっけ…


そう言われてみれば

言ってたような気もする




「もう帰る?」


「うん」


「じゃあ一緒に帰ろ」



「え、あ、うん、ちょっと待ってて!」




返事をして急いで帰る支度をすると

「そんな急がなくていいから」と

私に声をかけた



そんな心遣いがいちいち胸に刺さった




「怪我、大変だったな」



駅まで歩く中で俊が話し出した



「うん…でももう結構平気だよ」



「それなら良かった」





何も知らないで

私の隣を歩いて

私に笑いかけてくれる俊




私が先生に言った

「逃げない」の言葉は

俊にも当てはまるんだろう



でも言ったら

君を傷つけてしまう


いや、

言わないほうが

君を傷つけていくのかもしれない…




ふと美紗希の言っていることが気になって

聞いてみることにした




「俊さ…私が怪我して保健室行った時、どこにいた…?」



「…なんで?」



その間は何…?

何か隠しているの?




「美紗希が言ってたの。その時俊がいなかったって」




さっきの間より

もっと長い間隔を開けて返事が返ってきた




「花奈のとこ行こうと思ったんだけど、先生に止められて、それで遠回りして裏から入ろうと思ったら先生に見つかってさ」


そこで乾いた笑い声をあげる


「恥ずかしいけど、長々と説教を受けてた」




あなたが私に向けるその笑顔を

私は信じていいんだよね?



もしかしたら、保健室の近くまで

俊は来ていたかもしれないという予感がしていたけど

それ以上は聞けなかった



「それよりさ」



俊が話題を変えてきた



「いつ出かける?足治ったらの方がいいよな?」



そうだ、デートの約束をしていたんだ


私は視線を地面に落とす


この気持ちのまま

俊とデートなんて出来ない気がした



だって私は…



「花奈…?どうした?」



断らなきゃ

一緒に行けないって

それで謝らないと



逃げるな、自分



「あのさ…」



見上げた俊の顔は悲しそうに

微笑んでいるような気がした


その顔に心を掴まれ

すぐそこまで出かかっていた言葉を

簡単に飲み込んでいた




「うん、治ってからにしよ」



負けた



私の決心は一瞬にして

儚く散っていった




この時、言っておけば良かったんだ


そうすれば、あんなことにはならなかった


歪んだ私たちの関係に