歓声に紛れて

凄まじい音がグラウンドに響き渡った


生徒がザワザワしだして、

状況を理解し始めた


本部テントにいた先生方が

こっちにやってくる



そんな中、私は冷静に

やってしまったと思っていた


粉々に割れたガラス瓶があたりに散らばり

私はそれを避けるように左側に倒れた



私にはさっきの出来事が

スローモーションで脳内再生されていた


斜めになりながら

ほぼ真下に落ちたダンボール


衝撃で飛び出たガラス瓶


『避けなきゃ』ととっさに思って

左側に倒れる私



体育祭を台無しにしてしまった

楽しかったはずの体育祭を



私は涙が出そうだった


痛くてじゃなくて

申し訳なくて



「花奈!」



私の名前を呼ぶ声がした



やっぱりあなたなんだ

やっぱり離れられないんだ



「先生…」



私の側へ一番に駆け寄ったのは

柳田先生だった



「大丈夫か!?」



そう言って私の身体を起こす

そして先生の表情が強ばった



「脚、怪我してるじゃないか!」



え…

脚?



自分の脚を見ると

右脚の膝から下

つまり体操着から出ている部分が

切り傷で血が流れていた



「怪我、してたんだ…」



どうも上手く働かない頭で

そんな言葉が口から出た



「まぁ大変…!これは急いで保健室に行きましょう!」



保健の先生もやってきて

タンカを持ってくるように指示していた



「あの、私歩けますから」



タンカなんて大袈裟だ

これ以上目立ちたくなかった



そう言って立つと

頭がグラッとした



また倒れる



そう思ったが、

私を支えてくれた人のおかげで

倒れる事は無かった



「花奈、無理するな」



柳田先生だった



「無理なんてしてない、です…」



「ダメだ」



「歩けます」



「ダメだ」



先生の顔が見れない


これは怒ってるかもしれない

私がこんなことしてしまったから




「…はぁ、仕方ないな」



そんな声が聞こえた


ついに飽きれられた?

まぁそれも仕方ないことかな



そう考えていると

脚が地面にから離れた



「え…?」



気づくと柳田先生に抱っこされていた

お姫様抱っこってよく言うあれ



あまりにも軽軽しく持つから

何が起きたか分からなかった




「ちょ…先生!これじゃぁ…」



「まぁこれで我慢しろ」




これじゃあ余計目立っちゃうよ…


あぁ女子からの視線が痛い

痛すぎる



先生は人目を気にしてないように

私を抱えたまま歩き出した



バクバクと鳴る心臓で

体温が一気にあがっていくのを感じた



その背中を見つめる

俊の視線には気付くことが出来なかった