蒼空SIDE


理子がまさか、

本当に来てくれるとは思わなかったけど。


美咲のために、

そんなに一生懸命してくれるなんて、

ちょっと見なおした…


告ってきた子は、告られた時が

初対面だったけど。

その時に、名前言われて、

それから、毎日ストーカーしてくるから

顔も覚えた。


若葉ちゃんっていう。

せっかく可愛いのに、もったいないよな。

オレなんて好きになるなんて…。



理子「そっ、蒼空!

   あの…」


蒼空「…ん?」




なんかもじもじしてるけど…

いつもの潔さはどこにいったんだよ!笑



理子「あそこ入りたい…!」



理子が指差したのは、

お化け屋敷だった。


いやいや、普通女子って、

嫌がるもんだろ?!

「こわーい♡」

とか言うんじゃねーの?!



理子「…!」



珍しく、素直に頼んでくるから、

断れない。


俺…怖いの苦手なんだよな…。



蒼空「わかったよ…行こう…」



理子は、俺の返事を聞いて、

満面の笑み。




理子「早く行こっ!」



蒼空「ドキッ……///」




やば…。

俺に笑ったとこ見せてくれないから、

新鮮すぎて…。




店員「高校生お二人ですね。

   では、恐怖の世界へ


   いってらっしゃーい!」


……この店員、テンション高すぎだろ…。


恐怖の世界とか言うなって!

もっと怖くなったんだけど…。



理子「真っ暗だー!

   好きなんだよね〜。」


機嫌いいな…。
 
お化け屋敷得意とか…

やっぱ、モデルとかする奴って、

変人ばっかりなのか?



蒼空「うおっ…」



理子がどんどん進むから、

俺は置いてけぼり。


こえーよ!



けど、そのとき。



【ゴロゴロ、ドッカーン】



雷の音が鳴り出した。

雰囲気づくりか?

凝ってるな〜。





理子「…」



急に、俺の5メートルぐらい前にいた

理子が、戻ってきた。


ん?


な、泣いてる?!


さっきまで楽しそうだったのに?!



蒼空「ちょ、どーした?!」


理子「っ…か、かみなり……むりっ!…」



あ〜。

そういうことか…。


雷がなるなんて、珍しいもんな。

あんまりお化け屋敷じゃ、
 
ないもんな〜。



理子「早く出たい…っ…たすけてっ…」




号泣してんじゃん…。

出口行ったら、俺が泣かせたみたいになる

パターンじゃねーか!!


蒼空「ほら、大丈夫だから。

   行くぞー。」


俺は、また手をつないで、

理子の片耳をふさいで、

歩き始めた。


理子「音がちっちゃくなった…!」

蒼空「な?これで怖くねーだろ?」

理子「…蒼空だって、

   お化け屋敷苦手でしょ…。」

蒼空「そ、そーだよ!  

   まあ、泣くほどじゃないけどな!」


 
理子は、握る手を強くしてきた。

なんか、小さい子みたいだな…。


なんて思ってたら…。



「うわーーーーーん」




ほんとの小さい子の泣き声が

聞こえてきた。



理子「っ!」



その瞬間、理子は走りだした。



俺も、ダッシュで追いかけると…。


理子「迷子?

   名前は?」

子供「…ヒック………うっ……るり…」

理子「るりちゃんか〜。

   かわいい名前だね。」

子供「ねえ、怖いよ〜ママは?」

理子「ママはね、出口で待ってるよ。


   お姉ちゃんが

   つれてってあげるからね


   もう大丈夫。」




…本当にさっきまで、大泣きしてた奴かよ…


全然違う…。

強くて、凛々しくて、頼もしい。


けど、演技してるわけじゃなくて、

本当の理子だった。



…本当は、怖いはず。

雷の音は、

さっきより大きくなってるから。

 

子供「おねぇちゃんは、怖くないの〜?」

理子「怖くないよ。

   だって、一人じゃないもん。

   るりちゃんがいるから

   怖くないよ。ありがとう。」



今まで、俺は、

可愛い女子しか見てこなかった。 

あ、外見じゃなくて、中身のことね。


まあ、美咲を除いてだけどさ。


俺が好きな子ができなかった理由が


わかった気がした。