「わぁきれー。」

私は美術室につながるロータリーを歩きながら、
青々と葉をつけている木々を見た。
葉っぱの間から溢れる日の光はキラキラしてる。
山の中にある学校の特権だと思う。

あたしの通っている学校は周りに木しかない、
といっても過言じゃないくらい田舎にある。


「ゆう!そんなとこにいると授業遅れるよぉ!」
「はーい。今行くー!」

私は親友のなおみに注意されながらも
のんびりと美術室に向かう。

美術はあたしの大好きな授業。
たしかに、絵を描くことも好きなんだけど
美術室に向かうにはさっき通った
森のトンネルのようなロータリーがある。
静かで気持ちが落ち着くからすき。
それにあたしの席から見える景色がほんとにきれい。



「それでは、
今日は絵の題材になるものを探してきてください。」

そう言いながら先生は
カメラを机の上に置いた。

班にカメラ一台なので
みんなで回しながら撮るんだけど
これもいつものパターンで
私は一番最後に撮る。


カメラを持っていない間は
なおみとぼーっとしたり、
なおみの題材を一緒に決めてあげる時間━━━
のはずなんだけど、、、、


「ゴメンゆう。
班の子が一緒に考えて欲しいっていうから
今回は班の子と撮り行くけど来る?」
「ううんー!大丈夫!」
「じゃーまたね!」

ということは久しぶりに一人かぁ、、、、
寂しいな。

と思いつつも
楽しみにしてる自分もいた。


階段を上がって屋上につき
そのまま寝っ転がる。
あたしの大好きなもうひとつの場所。
誰もいない屋上で青い空を見上げる
至福の時。


なおみが居るほうが楽しいけど
一人で見るのもすきなんだよね━━━━




「ゆう起きて!ゆう!ゆうか!!」
「っは!ごめん寝ちゃってたー。」


今回の題材は何がいいか考えてたら
いつの間にか寝ちゃってたみたい。


「寝ちゃったよーじゃないよ、もー!
カメラ、次ゆうだってよ!」

と言いつつ
あたしにカメラを渡してくれた。
あれ?
班の子と一緒じゃなかったっけ?


「あれ?班の子は?」
「なんか他の子と一緒にやり始めたから
いいかなーと思ってさ!」

(っえ、いいのかーい。)
つい笑いそーになった。

「ゆう探そうと思ったらゆうの班の子から
カメラ渡しといてって、はい。」
「っあ!そーだったんだぁ。ありがとー」


どこに居るからとか言ってないのに
居場所をわかってくれるのはさすがだね。

友だち想いのなおみは
ちょっと人が良すぎるんじゃないか
って思うくらい良い人。
それに対して私は、、、
自由気ままで自分勝手だから
ちょっとなおみがかわいそうな気もするけど、、、。


「一緒に空見る?」
「いいの?ありがと」

そう言って
あたしの横にちょこんって座る。
もー可愛すぎる。
レズではないけど、
たまにぎゅってしたくなる。


「ねぇ、またゆうは空にするの?」
「うん。たぶんね。」

にこにこしながら聞いてきた。
もう答えは知ってるはずなのに。



そうなんです。
私はいつも空を題材にして
なおみに笑われてます。


「ふふふ。
やっぱりそーか。」

その顔、可愛すぎ。


「で、今日はどんな空なの?」
「今日はねぇ
強いけど優しい空かなぁ。」
「なんだそりゃあ!でも、そんな感じかもねぇ。」
「うん。だってそうだもん。」


目を合わせて二人で爆笑。
なんか笑いすぎてお腹痛いや。


「笑いすぎてお腹痛いよー。」
「あたしもー!
でもゆうがいけないんだよ。」


顔を合わせて
また笑う。


カシャッ

ん?
なんの音だろ。
横を見たらいつの間にかケータイを構えてたなおみ。


「なおみ~今撮ったでしょ!」
「撮っちゃったぁ。」
「撮っちゃったぁ、じゃなーいの!」
「待ち受けに設定完了。」


私たちはお互いに顔写真とかを
ケータイの待ち受けにしている。
周りの人からもきっと
変な奴らだと思われてるだろうけど
自分たちが一番良くわかってる。

「私にも撮らせてよー。」
「ゆうはいいの!」
「けちー」


そう言ってむくれた私を笑いながら

「ほら!空とらなくていいの?空!」
「とるもーん」


ずっと笑いっぱなし。
この時間も好き。


そんなことを思いながら
強くてでも優しい空をカメラに収めた。