あ、今日の朝ご飯はパンじゃなくて、ご飯なんだ
いつも、トーストばかりだから、それがなんとなく新鮮で、ちょこっと嬉しくて、思わず階段を駆け下りた
狭い階段で、ふと、風を感じる
それは、自分が起こすのとは、逆向きの風
少し気になりつつも、まあ、気のせいだと思って、そんなに気にはしなかった
降りてすぐ、ダイニングに向かうと、お父さんが、味噌汁をすすりながら、ニュースを見ていた
いつものお父さんは、メガネかけて、しかめっつらで新聞読んでるのに、今日はテレビを見ている
いつもと違う
弟のりょうは、いつも、私より早く起きていて、今ごろ、朝ご飯を食べ終えてるはずなのに、今日は、起きてもいない
全くもう、なんで起きてこないのかしらと、お母さんが、ダイニングキッチンの奥でつぶやく
いつもは使わないエプロンがイスの背もたれにかけてある
「お母ーさん、私が起こしてくる!」
私が、そう言ってダイニングから出たあと、お母さんが
「あら、珍しいわね」
と言うのがかすかに聞こえた



