向こうのドアからは有希が居る場所は見えない。
だから誰が来たのかは自分も分からない。
反対にむこうも有希がいることは気付いていないだろう。

足音は段々とこちらへ近づいてくる。

足音が止まり、私は息を呑んだ。
見つかる覚悟はできている。


「何してるんですか、今は授業中だと思うけど」

そっと目を開けてみれば
柴田先生と目が合う。
どうして先生が此処に来たのか分からなかった。

「…」

先生に問い詰められても私は無言のままだ。
"柴田先生が最近冷たいから"
なんて本人の前では言えるはずがない。

「気分悪いならこんな所にいないで保健室に行きなさい」

「…」

しかし、いつまで経っても口を聞かない私に先生は呆れたりしなかった。

どうして…?

そう思っても声には出さなかった。

そんな時、先生は私の横にあるロッカーへと手を伸ばす。