後輩達が剥がした作品をすべてまとめると、手にそれらを持ち職員室へ向かう。

廊下に出ると何ともいえない雰囲気が漂っていた。
自分の目に映るのは空の黒色とほんの少しの月明かりだけだった。
私は足元を少々、ふらつかせるものの慎重に歩いた。

視聴覚室あたりまで来たとき、人影のようなものが私の目にとまった。
その人影の正体は分からないが、恐怖心もなく吸い込まれるように視聴覚室へ足を踏み入れる。


「先生…?」

私は人影に向かってそう呟いた。
何故そう言ったのかは分からない。直感だろうか…


「はい?」
返事が返ってくる。
それは紛れもない柴田の声であった。

涙が頬を伝う。


「先生、どこへ行ってたんですか!」

先生の傍へ近づくと余計に涙が出た。
冷たくなった指先で懸命に涙を拭くが、それでも堪えることが出来ずにいた。

「どうした?」

先生は私に何故泣いているのか問う。