「たまたま近くに私がいたんですよ」


柴田は面倒なことは避けたいと思いそう言っておいた。
柴田が宮川の表情を伺うと納得のいかないといった顔をしていた。


それからは沈黙が続き、会話が自然と終わっていった。
会話がない中、それでも自然と足が進む。結局、話がないまま教室の前まで来てしまった。
そこで柴田は宮川にそっと言った。


「あんまり、気にしなくてもいいと思いますよ」


そして宮川はその言葉に頷いた。



柴田は何事もなかったかのように教室のドアを開け、教卓に立った。