先生は黙ったままだったが私はそのまま
話しを続けた。


「数学を教えてくれた優しい先生が好きで、でも、教師と生徒の関係が崩れるのが怖くて…なかなか言えなかった」

更にそのまま私は言葉を続ける。


「"好き"なんて言ったらいけないのに…迷惑なのに…本当に最後までごめんなさい」

たくさんの涙が私の頬をつたった。

何度も諦めようとした
先生へのこの気持ち。
教師と生徒…
許されない関係。

告白したところで結ばれるはずもない。
迷惑な感情―

「田中さん」

先生が私の名前を呼ぶ。


嫌だ…。
私は何を言われるか分かっていた。
ふられるにちがいない。

「嫌っ聞きたくない!」

私は怖くなって耳をふさぐ。
涙は止まらない。それどころか、段々溢れてくる。
心配して近寄ってくる先生を払いのけて
私はドアの所まで 走った。

「ごめんなさい、先生。さっきのことは忘れてください」


「田中さん!待ちなさい!」
先生が私をとめる言葉も聞かずに、私は部室から走って出ていった。



私は逃げたんだ――

――怖くなって逃げ出し たんだ。