生きていることはわかる。
自分がなにかしていることもわかる。
ただ、何をしてるのかが思い出せない・・・。
「坂之上くん! 焦げてる、焦げてる!」
ああ、そうか。いまは調理実習中だった。
僕、坂之上 神影(さかのうえ みかげ)
はフライパンの上で焦げてしまったものを
皿にのせる。
「あらら。また、ボーッとしてたんでしょ?」
ぼくのとなりにいる、桃色の三角巾と藍色のエプロンに身を包んでいる、幼馴染みの
九重 矮華(くのう あいか)が焦げてしまっているものと僕を交互に見ながら、聞いてくる。
「ああ、悪い・・・・・・。」
僕はぶっきらぼうにそういって顔を反らして窓の奥にある広大な青空を見つめる。
「まったく。 
坂之上くんだけいつもそうやってるから
夏休みまで、こうやって補修になっちゃうんだよ?」
ああ、そうか。いまは夏休みか。
「ああ、うん。 悪い。」
「また、それ。どうせ、口だけで内心反省なんてしてないんじゃないの?」
ああ、そうだけど、なにか?
っと言ってやりたかったが、そう言ってしまうと、まためんどくさいことになると
    ・・ 
思い、言うのをやめて、
「ああ、悪い」
とだけ言う。
「・・・はぁ。」
彼女は小さなため息を吐いて、
「とりあえず、今日はおしまい。
ほら、片付けしよ?」
「ああ」
こうして、また1日が過ぎていった。