その身は凍る

 大家は言った。



 そこには中年女性どころか誰もいないと。



 そして4年前程からあんたと同じようなことを言って出ていく住人が続々と現れた。



 男は大家の最後の言葉を聞く前に通話を切断した。


 恐怖のあまりに。



 出ていくことも考えたが、引っ越しする金なんてない。



 男は窮地に立たされた。


 そんな今も背後に気配を感じる。



 ここにいたら殺される。


 男はこのまま逃げることを決意し、震える体を無理に動かして荷造りをし始めた。



 友達のとこに逃げ込んで、それから引っ越しすりゃいいじゃねーか。



 そう思った男は朝だというのに慌ただしく動き出した。          


 一心不乱に必要な物を茶色の旅行バックに詰めていった。