その身は凍る

 5分程して階段を下りていく音がし、ドアが開く音が聞こえた。



 ・・戻ったか?



 男はゆっくりとベッドから下り、音を立てないように玄関に行き、覗き穴から様子をうかがった。



 ひっ!



 男は声を上げそうになったがなんとか喉で止めた。


 あの中年女性がドアの前に立っていた。



 男が身を後ろの壁に背をつけたまま動けずにいると

「あなたは誰?」


 と声が聞こえてきた。 


 男は体を震わせながらも「警察呼ぶぞ!」と叫び、ドアを蹴った。



 しかしそこから動く気配もなく、中年女性はなにかを呟いた。



 聞き取れなかった男は


「ほんとに呼ぶぞ!」


 と怒鳴ってドアを再度蹴った。



 すると中年女性は男に聞こえるように、


「・・あなたも早くいなくなって」


 と言ってゆっくりとした足取りで部屋に戻っていった。