「おっ、さすがに混んでいるなぁ~、人気だし、しゃあないなっ!」




「そうねぇ~、さっ行こっ。」




かなり混んでいたので、足早に館内をすすむ二人。

人気のペンギンの前や、熱帯魚の前は夏休み前の小学生が

群れをなしていた、ゆっくり鑑賞どころではなかった。




「なんだ、これ、全然見れないなぁ~、なんだよぉ~、もぉ出るか?」




「えぇ~まだ来たばっかりじゃないの!こっちこそなんでよぉ~だよ。」




「だって、これじゃあさぁ~楽しめなくない?」




「もう少しすれば、空くだろうし、ちょっとくらいい我慢できないの?」




「はぁ~い、すいませぇ~ん。」




清彦は少し、茶化しながら、謝ったのだが、その姿勢が清美は

気に入らなく、ふくれてしまった。




今日のプランだって清美が決めたもので、それを何か否定された感じに

なって悲しくなっていた。




「なんで、こんな事で、ふくれるんだよぉ~。」




「こんな事でも、膨れなきゃいけないのは何でか分からないあなたに

 悲しくなっているだけよ!」




清美の気持ちは正直だ。




その気持ちを解ってあがられない清彦。




清彦も悪気があったわけじゃない。




ちょっとしたすれ違いが起きた結果だ。




お互いがお互い少しでも、歩み寄れば多分分かり合えたはず。




その歩み寄りを、なぁなぁになっている事を、




そろそろ気付いてもいい時期になるのではないか。










結局、清美は水族館を出て、足早に池袋のアーケードをくぐり

駅へと向ってしまった。




それを無言で追いかける、清彦に今後の二人の行方にかかっている




そんな気が少し、してきた。