BORDER LINE


結局、試合3分前になって、少女はひょっこり現れた。

俺は、安堵の溜息を洩らす。

今朝、

「試合?観に行けないわ、絵画コンクールが近いの。」と、相変わらずの塩対応少女を、

俺が「絶対ぇ、勝つから」と、「激ウマクレープ奢るから」と、ムリクリ、武道館まで連行してきたのだ。

そういうわけで、

少女が、怒って、俺の試合が始まっても、武道館裏で、おにぎり頰張り続けてたら、絵筆を握り締め続けてたらどうしようとかいう、
不安がないわけでもなくなくなかった。
(筆者注:つまりは、ものすんごい不安でした。)

なぜ、俺が幼なじみの少女の存在にこれほどにまで固執するのか。

それは、剣道あるまじきことであろうが、少女の存在が、俺が剣を振り続ける、理由であるからだった。

試合の3分間。

それは、

少女の真剣な眸が、
どこまでも飄々とした少女の、どこまでも貪欲な眸が、
一瞬たりとも見逃すまい、と、
その剣筋、気迫諸共、キャンバスに閉じ込めてやる、と、
俺だけに注がれる、3分間。

また、最も充実した気勢、そして、大きな幸福感をもたらす、3分間でもあったのだ。

試合30秒前、汗ばむ掌を袴の裾で拭い、剣を握り直した。