朝倉は、スケッチブックに、金色の稲穂を描き、銀色の雨を描いた。

青い草原を描いたし、虹色の風も描いた。

また、朝倉は、ヒトを描くことはしなかった。

朝倉が転入して間もない頃、ある少女が朝倉にそのことを尋ねたことがあった。

「どうして、可愛い女の子とか、カッコいい男の子とか描かないの?」

朝倉は、慈しむかのように、スケッチブックをひと撫でして、静かに応えた。

「私はね、綺麗なものを描きたいのよ。」

その眸に、色は抜け落ちていた。