特大鍋らぁめん初完食に、王手をかけるのは、俺の隣に、ちょこん、と座るこの女。

少女は、細い腕で、でっかいお鍋を抱えこみ、さも美味そうに、麺を啜った。

いつもは適当に背にあしらっている、鬱陶しい黒髪は、今日は、対特大鍋らぁめん戦のため、ポニーテールで括られている。

お鍋には、先代直伝のスープに、十玉分の麺と、めんま一袋をぶちこんだだけの、雑な醤油ラーメン(もう既にめんまと麺屑がスープに浮いてるだけだが。)。

少女の腹に、大鍋の麺が消えていくのと、比例するかのように、関ヶ原は騒がしくなった。

「あの子、あの化け物らぁめん、完食するってよ」、と、

近所のオバさま達が、押しかけてきたからだ。