美術室。

時折、白いカーテンが風を孕み、柔く膨らむ。

その度、西日が射し込み、ところどころ傷つき、黒ずんだ床に、オレンジ色の緩い線を引いた。

学園は考査期間に突入し、グラウンドからは、下手くそなくせに威勢だけは一丁前の、野球部やサッカー部の掛け声が聞こえてくることはない。

美術室もガランとしていて、少女の他に人かげは見えない。

まぁ、少女には、見馴れた景色であったけれど。

帰宅部という二つ名を併せ持つ、美術部は、ユーレイ部員で溢れかえっていた。

部活日誌には、百名超の名がつらつらと連なっているくせに、

毎ん日デッサンし、展示会に出展し、コンクールに応募して……と、

そんな、美術部でっす、と胸をはれる部員なんて十名いるかどうか。

しかし、少女は、そんなこと、どうでもよかった。

また、親しくない人の前ではひたすら無口で、長い黒髪をおろしている少女は、

美術室のお化け、などと、人外なあだ名をつけられていた。

少女は、気にも留めていないようだった。

少女は、ヒトに無関心であった。

だからといって、ヒトに対して、挨拶スルー、質問スルーで通しているわけではない。

挨拶されれば、ニコッと笑ってかえすし、何か尋ねられれば、大真面目に応える。

しかし、ヒトのことを知ろうとはしなかったし、知りたいとも思っていないようだった。

〝好きの反対は嫌いじゃなくて無関心〟とはよく言ったもので、

少女は、ヒトが嫌いだったわけではない。

少女は、ただひたすらに、絵を描くことを愛していて、少女が描く対象から、ヒトは外れていた。

結局、少女は、ヒトに1ミリの興味ももっていなかった。

それだけのことだ。