恋なんていたしません!

水産部は人が少ないのだ。

例え新しい人が入ったとしても、だいたいはレジかグロッサリーかデリカに流れてしまうのだ。

最後に水産部に新しい人が入ってきたのは、3年前の田ノ下さんだったのだ。

その彼女も辞めてしまうとなると、またわたしが下っ端になってしまうと言う訳だ。

28歳で下っ端と言うのは限界があるぞ、限界が。

求人広告だ何だといろいろと募集をかけているみたいだけど、水産部に新しい人がやってくることはまずないと考えた方がよさそうだ。

「間もなく、新郎が入場します」

あっ、始まった。

新郎である田ノ下さんの旦那さんが介添人と一緒に入場してきた。

白いタキシード姿がとてもよく似合っていて…ああ、本当に田ノ下さんと結婚するんだなって思った。

彼が祭壇の右側に立った時、今度は純白のウエディングドレス姿の田ノ下さんがお父さんと一緒に現れた。

お父さんと一緒にバージンロードを歩いた田ノ下さんの瞳は少しだけ潤んでいるように見えた。