恋なんていたしません!

えーっと、何で一ノ瀬がわたしの隣に座っているんだ?

どう言う訳なのかはよくわからないが、流れ的にそうなってしまった。

それにしても、本当にスーツがよく似合っているなあ。

「どうかされましたか?」

一ノ瀬がこちらに視線を向けてきたので驚いた。

「いえ、何でもないです…」

わたしは首を横に振って答えた。

まさか、あなたのスーツ姿に見とれていたなんて言えない…。

「伊勢谷さんも異動になって、田ノ下さんも仕事を辞められるとなると、寂しくなりますね」

そう言った一ノ瀬に、
「そうですね。

伊勢谷さんは代わりの人がきますけれど、田ノ下さんはそうはいきません。

新しい人がくるまで待つしか他はありませんね」

わたしは言い返した。