恋なんていたしません！

「大丈夫ですよ、伊勢谷さんが何かしたら僕が止めに入りますから」

わたしの頭の中を読んだと言うように、一ノ瀬が言った。

話しているのは伊勢谷さんの方で、田ノ下さんは彼の話に耳を傾けていた。

時おり、「そうですか」とか「はい」とか彼女が返事をする声が聞こえていた。

思ったような展開になったらどうしようかとハラハラしていたけれど、この様子ならば大丈夫そうかも知れない。

「あっ、そうそう。

先日野々村さんがくれたチョコレート、とても美味しかったですよ」

そう思っていたら、一ノ瀬が話しかけてきた。

「そうですか、ありがとうございます」

わたしはお礼を言った。

「特にオレンジと組みあわせたチョコレートが美味しかったです」

「ああ、オランジェットですね」

一ノ瀬の話にわたしは相づちを打った。