恋なんていたしません!

食堂から職場に戻ると、追加の刺身を切っていた各務原さんに先ほど聞いた昨日の出来事を話した。

「俺もビックリしたよ。

たーちゃん、そんなことを一言も言わなかったもん」

話を聞き終えた各務原さんが言った。

「わたしも驚きました」

「たった一言だけ、結婚しましたって言うだけなのにね」

「そうですよね」

そう返事をした後、わたしは売り場を出て商品の確認をした。

「どうも」

その声に顔をあげると、
「あっ、どうも…」

一ノ瀬がいた。

彼の過去を聞いてから数日が経ったのだが、何となく気まずい状態になっていた。

りんごのお礼なんかしなければよかったな。

そう思っていたら、
「聞きました?」

一ノ瀬が聞いてきた。