「あっ…もう、帰られるんですか?」

そう聞いてきた一ノ瀬に、
「ええ、もう帰ります」

わたしは答えると、その場から離れた。

「お茶、ありがとうございました」

一ノ瀬にお礼を言うと、部屋を後にした。

自分の部屋のドアを開けて逃げるように中へ入ると、わたしは息を吐いた。

「――結局、何がどうなったのやら…」

心の中でさんざんバカにしてきたあの男も、わたしと似たような過去を抱えていた。

わたしは乙女ゲームで、一ノ瀬はフィギュアと特撮――何なんだろう、この共通点は。

「訳がわかんないな、本当に…」

それ以前に、あいつもあいつで苦しんだ過去があったのか…。

わたしはそんなことを思うと、靴を脱いだ。