恋なんていたしません!

乙女ゲームのグッズであふれかえっているこの部屋を見て、よく片づいてるなんて言えたな。

「へえ、お酒を飲むんですね」

そう言った一ノ瀬の声に視線を向けると、彼は冷蔵庫を開けていた。

「あっ!」

全くと言っていいほど中身が入っていない冷蔵庫を開けたうえに見やがって…!

しかも、普段は飲みもしなければ買いもしないお酒――と言っても、チューハイなのだが――が入っているところを見られるとは…!

もう情けなくて恥ずかしいよ…。

相手は一ノ瀬だから気にするなと言いたいところだけど、一ノ瀬だから嫌だと言う話でもある。

親の顔が見てみたいわ!

あまりにも無神経すぎる一ノ瀬を追い出そうかと考えていたら、彼は冷蔵庫からカマンベールチーズを取り出した。