「生めかじきは…」

ピピッと手なれた様子で機械に打ち込みながら、田ノ下さんが主任の各務原さんに声をかけた。

「明日は特売で行くからグラム298円、産地は沖縄」

「はい」

各務原さんが本サワラを捌きながら答える横で、田ノ下さんは返事をするとトレイに入っている生めかじきの切り身を機械に入れた。

その手つきは3年目と言うこともあってかなれている。

最初の頃はどうすればいいのかわからなくて戸惑っていたっけ。

懐かしい思い出に、わたしはかごを洗いながらフフッと笑った。

わたしも田ノ下さんみたいにかわいかったら、進むべき人生が違っていたのかな?

「本サワラは福井県で、2切れ780円」

「はい」

田ノ下さんはトレイに入っている本サワラを機械に入れた。