今の誠司さんにならサイフォンでコーヒーを淹れてあげてもいいかなと思ったが、急いでいるみたいだから、今日もインスタントのコーヒーで我慢してもらった。
「どうぞ。冷めないうちに。」
誠司さんは私に気を遣ってか、出されてすぐにマグカップを口に付けた。「あちっ!」と静かに言った。
「そんなに無理しなくていいですよ? 飲める量だけ飲めばいいですから。」
「子供じゃあるまいし、コーヒーくらい全部飲める!」
そういう意味で言ったんじゃないのに、どうしてこうわかってくれないんだろうか。
まあでも、熱さに耐えながら一生懸命コーヒーを早く飲もうとしている誠司さんのこれじゃない優しさは、見ていて微笑ましかった。



