パソコンを前にすると、思った通り、タイピングをする手が止まらなかった。
ショパンのようだ。超絶技巧。とにかく、人間技じゃないと自負するほどだった。
しかし、クラシックは聞こえてこない。キーボードの音、ニュースキャスターの深刻な声、そしてシャワーの音。
シャワーの音がいけなかった。
嫌でも想像してしまうのだ。
誠司さんが今、私のシャンプーを使って髪を洗っているな、それをシャワーで洗い流しているな、ちょうど洗顔クリームを出しているところだろうか、ヘチマの垢すりを使っているだろうか……。
想像すると、それが妄想に変わって、アニメーション調に映像化される。やけに鮮明で、新海誠監督作品並みの大作だ。
またイケメンだから困る。「イケメン+シャワー=綺麗」という方程式が出来上がる。動悸までしてきた。息が荒い。胸が苦しい。コンコンとどこから迷い込んだか、キツツキが忙しなく働いている。



