「最悪だったけど、聞く?」
少し迷ったが、今が最悪だ。もう最悪慣れしてしまっていて、今は真実が知りたい。
「聞く。知ってること全部話して!」
明美は「あいわかった!」と言って、それからシャワーの音が止んで、受話器からはシャカシャカとシャンプーの音が聞こえてきた。
「まずあんたと誠司さん、笹川さんの三人が日本酒の飲み比べを始めたの。それはお猪口なんかじゃ足りなくて、最終的には船盛の器に『エンヤーコッコ! エンヤーコッコ!』とまあ、楽しそうに歌いながらなみなみ注いで、三人で回し飲みしてたわね。」
あちゃちゃちゃちゃ……。
「それで、2時頃に私が無理矢理切り上げて、タクシーを捕まえて、笹川さんを押し込んで、それで二台めのタクシーに誠司さんを押し込んだんだけど、そのタクシーにあんたも乗るって言い出したのよ。」
「ちょ、ちょっと待って! なんでそんなこと私が言うのよ?」
「知らないわよ!」
明美の言う通りだ。本人が知らなければ、迷宮入りだ。



