さて、藤原が使えないとなると、頼りは己しかいない。
それに、よくよく考えれば、この状況を藤原や他の誰かに見られたらちょっとしたスキャンダルだ。花の名社のオフィスで、震度2くらいの揺れが起こるだろう。
誰にも知られてはならない。そして、昨晩のことを覚えているであろう、笹川さん、明美に話を聞くしかない。
一番シラフだったのは、明美だ。電話をかけた。
「もしもし、今何してんの?」
「今? 利用者の方をお風呂に入れてるとこ。どした?」
まあ、明美は器用なタイプではあったけど、ここまでとは思わなかっただけに、シャワーの音が受話器から聞こえてきたときは驚いた。
「昨日のことなんだけど、あの後、私がどうなったか覚えてる?」
明美は「もちろん。」とやけにさらりとした梅酒のように言った。



